スペインの祝祭

ヨーロッパ大陸の西端、イベリア半島の大部分を占めるスペインは、その国家成立の歴史的過程を見ると、半島内で地方ごとに分立していた王国が統合されて、出来上がった国だと言える。現在、広い国土を持つこの国を構成するのは、17に分けられた地方自治体であり、それぞれの自治州に対する地方分権も確立されている。かつての王国が母体となっているこれらの地方自州は、それぞれの独自の歴史を以ており、異なる自然条件から生まれた風土や住民の気質も、地域によって大きく差がみられる。また、言語に関しても、スペイン全体の公用語とされるスペイン語以外にガリシア語、バスク語、カタルーニャ語が地域語として存在し、それぞれの自治州の公用語として認知されている。つまり、スペインは、例えば、一般に言われるような「太陽の国」や「情熱の国」とイッタ単一的なイメージではとらえきれない。豊かな多様性を包括している国である。

祝祭の開催に目を向けても、スペインの多様性をかんじることができる。国全体の祝祭、自治州独自時のもの、また自治州内の町単位で行われるものなど、数多く存在するからである。これら祭りの開催を中心に歴を組むと一日も「休み」の日はなく、それどころか常に複数ある祭りの中から一つを選択しなければならなくなる。またすべての祝祭に参加しようと思えば、人間の一生では時間が足りないとも言われている。そして、形態、数とも多岐にわたるスペインの祝祭の多くは、キリスト教の祝祭歴を中心に開催されている。

カトリックを信仰するスペインには、ほかのヨーロッパ諸国と同様、キリスト教に由来する祝祭歴がある。しかし、この祝祭歴に関係する祭りの多くは、古代の土着信仰や農業のリズムによる祝祭がキリスト教伝播とともに取り込まれたものである。その代表といえるものが、太陽を信仰する古代宗教の冬至の祭りをキリスト降誕の祝祭に置き換えたクリスマスであり、春分の祭りをキリスト教の復活祭として定着させた聖週間である。現在のこの二つの祝祭は、スペインでもカトリックを象徴する祭りとして、認識され、その起源である冬至や春分の祭りの面影はほどんど残っていない。しかし、例えば、夏至の祭りを継承する聖ヨハネの日の祭りの内容をみると、炎が欠かせない要素となっていることがわかる。これは、太陽の力がもっとも強くなる夏至にその光を象徴するかがり火がたかれていた古代宗教の風習が、キリスト教の祝祭になった現在でも残っていると考えることができるだろう。

 

 

 

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